父の引き出し
故あって、父の引き出しを使わせてもらえることになった。
中にはいろいろな工具がぎっしり入っている。
子供の頃から、父のアトリエと称する物置小屋に潜り込んで、いたずらばかりしていた。
父が学生時代から使っているらしい工具をいれた大きな引き出し。一番上の引き出しは、ありとあらゆるペンチ類。2番目はありとあらゆるやすり類。3番目はありとあらゆるよくわからない道具。4番目はありとあらゆる・・・ずっしりと重い引き出しを順番に開けては、息をつめてそっと工具を手に取ってみる。どきどきする時間だったw
今も、それが少しも変わらずにそこにある。
「からんのとんかちー!」などと叫びながらそこら中たたきまわって叱られた、小さなカナヅチもちゃんとあった。
母が話したがるので実家にいる間はリビングで仕事しているが、母が出かけた先程、階下のアトリエに降りてみた。
父のいすに腰掛けて、作業台に手をおいてみる。ここから眺めるのであろう庭の緑を眺め、ハンガーにかかったままのジャンパーを眺め、きっちりと整理された種々雑多な道具類を眺め、うるさいほどのセミの声を聴いた。
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