16 August 2018

建築家のバカンス


下の階から天井に水漏れが来ている、と連絡が来たのが7月末日。さっそく建築家(このアパートのオーナー一族の一人)とお抱えの工務店の親父が調べにやってきました。
2人とも我が家の浴室を見るなり「ここだ!」と指さしたのはバスタブの排水溝。中の配管の不具合らしい。
築100年くらいのこのアパートは見た目はそりゃ赴きがあってよいのですが、中身もオモムキありすぎ。ボロボロだわさ。時々、壁の中をカラカラコロコロと石のようなものが落ちていく音が聞こえることもあります。窓枠はいまだに木だよ。
実はトイレもうまく水が流れなくなり、最近ではお鍋に水を汲んで流すという何ともサバイバルな生活を続けていたのであります。もちろん何度も文句を言っておりますが、外人の言うことなんてすぐ忘れちゃうことになっているらしい。
2人はあちこち調べた後、では9月から工事を始めましょう。と言って帰っていきました。
それから約10日後、朝早くに呼び鈴がなるので出てみると同じ敷地に住む建築家の甥っ子が立っていた。
「えーと、下の階の天井のしみがどんどん広がってきているので、お風呂は使わないでください」
「は?じゃあ、この暑い中、どうしろというんです」
「それはわかりません。建築家にも連絡しますが、今彼はバカンス中で不在なので、帰ってくるまでシャワーは使わないようにお願いします」
「ありえないでしょう!9月になるまでお風呂に入らず、建築家様のお戻りを待ってろってことですか」
「えーと…ではシャワーはほんの少しだけにしてください」
そう言って甥っ子はものすごく不機嫌な顔をして帰っていきました。不機嫌なのはこっちだ!

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